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院長コラム
<32>がんになる確率を下げる
日本人の2人に1人ががんになる時代と言われています。
そもそも日本人は長生きする民族で、長生きすればするほどがん発症の確率が上がると思うので、仕方ないような気がしますが、全てが運命や体質で決まるわけではありません。
国立がん研究センターの推計によると、生活習慣を見直すことで、がん全体の40%程度は予防可能とされています。
今回は、今日からでも始められる生活習慣の見直しポイントをご紹介します。
1. タバコはがんの最大リスク。禁煙を
喫煙は15種類以上のがん(肺・口腔・咽頭・膵臓・膀胱など)の原因になります。
日本のがん死亡のうち、約25%が喫煙に関連していると推計されています(国立がん研究センター「がんの予防と生活習慣」)。
禁煙を始めた時点から、数年かけてがんのリスクは徐々に下がっていきます。家族の健康にもつながる大切な一歩です。
喫煙は、がんだけでなく、脳・心臓・肺・全身の血管などあらゆる臓器を悪くさせる最悪の習慣と思ってください。
2. 酒は「適量」よりも「少量」へ
アルコールもまた、口腔・食道・肝臓・乳がんなどのリスク因子です。
特に日本人は「お酒に弱い体質」の人が多く、少量でもがんのリスクが上がることが知られています。
「毎日2合以上飲む人」は「飲まない人」に比べて食道がんリスクが10倍以上という研究結果もあります。
「飲まない日をつくる」「週末だけにする」など、自分に合った節酒習慣が大切です。
正直、飲まないにこしたことはありません。
3. 野菜を食べて、塩分は控えめに
食物繊維やビタミン類が豊富な野菜・果物は、大腸がん・胃がんの予防に効果的です。
反対に、塩分の多い食事は胃がんのリスクを高めます。
日本は世界的に見ても塩分摂取量が多く、1日平均9.9gです。
WHOが推奨する1日5g未満を目指すことで、胃がんリスクを下げる効果が期待されます。
むろん、がんだけでなく高血圧や腎障害、心血管・脳血管障害など様々な疾患の予防につながります。
4. 運動習慣は「がん予防の薬」
週に150分以上の中等度の運動(たとえば1日30分の早歩き)で、大腸がん、乳がん、子宮体がんのリスクが下がることがわかっています。
運動はがんだけでなく、糖尿病や心疾患、認知症やうつ病の予防にもつながる「万能の予防策」です。
5. 太りすぎ・やせすぎ、どちらも注意
肥満は、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がん(閉経後)など多くのがんのリスク因子です。
BMI(体格指数)25以上の人は、正常範囲(BMI 18.5~24.9)の人に比べて、
がん全体のリスクが10〜20%程度高くなるというデータもあります。
逆に、極端なやせも免疫力の低下などにつながるため、健康的な体重管理が大切です。
6. 感染症対策もがん予防に
実は、がんの原因の15~20%は感染症です。
特に重要なのが以下の3つ:
- B型・C型肝炎ウイルス:→ 肝がん
- ヒトパピローマウイルス(HPV):→ 子宮頸がん、咽頭がん
- ピロリ菌:→ 胃がん
ワクチン接種や除菌治療により、がんのリスクを大幅に下げられるのが特徴です。
7. 定期的ながん検診を
予防というより「早期発見」ですが、がんの死亡率を減らすうえでは非常に効果的です。
国や自治体が推奨する検診(胃・大腸・肺・乳房・子宮頸部など)を年に1回受けることで、「命を守るチャンス」が大きくなります。
早期発見で助かった人を数多く見てきました。
8. 紫外線を避ける習慣を
皮膚がん(特に悪性黒色腫)は、紫外線の影響が大きいことがわかっています。
日差しの強い時間帯を避け、帽子や日焼け止めで肌を守りましょう。
オーストラリアは、赤道に割と近くて日焼けしやすい白人の国、ということで、皮膚がんの発症が日本の10倍です。
紫外線は、がんだけでなく肌細胞の酸化(サビ)の原因となり、肌荒れやシミはご存じのとおり、加齢臭の原因ともいわれています。これからは日傘男子の時代です!
9. 睡眠とストレス管理も忘れずに
慢性的な睡眠不足や強いストレスは、免疫力の低下やホルモンの乱れにつながり、
一部のがん(乳がん、前立腺がんなど)との関係も示唆されています。
規則正しい生活と、リラックスできる時間を持つことも、長い目で見て大切な習慣です。
10. 発がん性物質への曝露を避ける
一部の化学物質や環境因子は、明確に発がん性があると国際的にも認定されています。
例えば:
- アスベスト(石綿):→ 中皮腫・肺がん
- ベンゼン、ホルムアルデヒドなどの有機溶剤:→ 白血病などのリスク上昇
- 職業上の曝露(印刷、金属加工、溶接など):→ 尿路系・肺・鼻腔などのがんリスクが高まることがあります
また、PM2.5(微小粒子状物質)やディーゼル排気ガスも、IARC(国際がん研究機関)により発がん性があると分類されています。
できるだけ換気をよくする、防護具を使用する、曝露の時間を短くするなど、回避や低減の工夫が重要です。
11. 口の中の健康が、全身の健康に
近年、歯周病とがんの関連が注目されています。
特に、歯周病がある人は、食道がん・胃がん・膵臓がん・口腔がんなどのリスクが高まるという報告があります。
また、義歯の不具合や虫歯があると、食事の内容が偏ってしまい、栄養バランスが崩れてがんのリスクにつながることも。
定期的な歯科受診や毎日の丁寧なブラッシングで、口の中の健康も守りましょう。
がんを100%防ぐことはできません。けれど生活習慣を見直すことで、そのリスクを半分近くまで下げることができるのです。
ただ、上記の推奨される生活習慣と正反対だった人が全てを完璧にできるわけがありません。
大切なのは、全部完璧にやろうと思わず、できることを少しずつ続けていくことです。習慣化することです。
「習慣が大事」ということは過去の記事でも記載してきました。
未来の自分を守るだけでなく、家族も不幸にさせたくない。そういう気持ちを前面に出したいところですよね。
