医学・医療

<53>アンチエイジングの食事を楽しむ

先日、外来に91歳の患者さんが来られました。

ある病気の経過観察でMRIを撮影したのですが、とても90歳を超えているようには見えません。

背筋はすっと伸び、立ち居振る舞いも落ち着いています。目も耳もしっかりしていて、話し方も明瞭。

MRIを見ても、年齢から想像するような脳の萎縮はほとんど目立ちません。

そして何より驚いたのは、自転車で軽やかに当院まで来られたことでした。

「この元気さ、若さの秘訣は何だろう?」

思わず聞いてみました。

「毎日、何を食べているんですか?」

すると、その答えがなかなか興味深いものでした。

毎朝、納豆を食べる。

魚は唐戸市場で新鮮なものを買う。

野菜が大好きなのでたくさん食べる。

肉を食べるなら鶏肉が好き。

白米は昔から好きではないので長年食べずにいて、玄米や五穀米などを茶碗半分ほど食べている――。

聞けば聞くほど、まるで健康食のお手本のような食生活です。

少し医学的に見てみても、

毎朝の納豆:大豆タンパク質や食物繊維を摂ることができ、発酵食品でもあります。心血管系や腸内環境の面からも健康へのよい影響が期待されます。

新鮮な魚をよく食べる:特に青魚にはEPAやDHAが多く含まれ、心血管疾患の予防との関連が知られています。認知機能の維持についても研究されています。

野菜をたくさん食べる:食物繊維、カリウム、葉酸、ポリフェノールなどを摂取できます。野菜を多く取り入れることは、健康長寿と関連する多くの食事パターンに共通しています。

肉は主に鶏肉:鶏肉は、筋肉や身体をつくるために必要な良質なタンパク質をしっかり摂ることができます。高齢になっても筋肉量を保つことは、フレイルやサルコペニアを防ぎ、いつまでも元気に動くためにとても重要です。また、赤身肉や加工肉に偏らないという点でも、健康的な食生活といえそうです。

白米ではなく玄米や五穀米:精製された穀物よりも食物繊維やさまざまな栄養素を多く含み、食後の血糖値も一般的には上がりにくくなります。

もちろん、この方が91歳になっても元気で、見た目も脳も若々しい理由が食生活だけにあるとは限りません。

生まれ持った体質や遺伝、運動習慣、生活環境など、健康や老化にはさまざまな要素が関係します。

実際、この方が日常的に自転車に乗っていることも、健康維持に大きく役立っている可能性があります。

ただ、現代の医学で健康的とされている食生活と、この方が何十年も自然に続けてきた食生活がかなり重なっていることは、とても印象的でした。

野菜を多く食べる。魚を食べる。豆類を取り入れる。精製された穀物より玄米などの全粒穀物を選ぶ。そして赤身肉や加工肉に偏らない。

こうした食事は、いわゆる地中海食やMIND食など、健康的な加齢や心血管疾患、認知機能との関係が研究されている食事パターンとも共通する部分があります。

さらに以前、別の90歳を超えた、とてもお元気な女性にも同じような質問をしてみました。その方は納豆やヨーグルトなどの発酵食品が大好きとのことでした。

たった2人のお話ですから、もちろん「納豆を食べれば長生きする」などという結論は出せません。

それでも、診察室で実際に元気な90代の方々にお会いすると、「この方たちは、これまでどんな生活をしてきたのだろう」と興味が湧きます。

これは単に「長生き」という話だけではなく、いつまでも若々しくいる、いわゆるアンチエイジングの話にもつながります。

NMNをはじめ、アンチエイジングや老化防止をうたった健康食品やサプリメントは数多く販売されています(当院でも、ご希望があればワカサプリ医療版の商品を取り寄せることはできます)。

ただ、そうしたサプリメントの中には、老化防止についての科学的根拠がまだ十分に確立していないものもあります。それよりもまず、健康的な加齢との関連が多く研究されている食生活を日々続けることのほうが、私はおすすめです。

そして最初の91歳の方のお話で、もう一つ印象に残ったことがあります。

健康のために我慢して、このような食生活をしているわけではないのです。

納豆が好き。魚が好き。野菜が好き。肉なら鶏肉が好き。白米より玄米や五穀米が好き。

つまり、好きなものを長年食べ続けていたら、結果としてそれがとても健康的な食生活だったのです。

健康によい食事を短期間頑張ることよりも、自分がおいしいと思える健康的な食事を見つけ、それを何十年も自然に続けること。

いいですよねぇ。

繰り返しますが、これは健康長寿ということよりも、老化防止の観点からかなり意識していいことだと思っています。

これからも外来で驚くほどお元気な90代の方に出会ったら、こっそり「毎日、何を食べていますか?」と聞いてみようと思います。


本格的な夏がやってきましたね。

急な環境変化に体がついてけないこともあるでしょう。皆様用心してください。

なお、当院でのマスク着用は義務ではありません。

下関市にて頭痛、片頭痛、めまい、物忘れ、頭のMRIなどは、志摩脳神経外科クリニックにてご気軽にご相談ください。