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院長コラム
<40>片頭痛に対する偏見
スティグマ
片頭痛を持つ患者さんの多くが感じていることの一つに、医療とは別の次元にある悩み、つまり「スティグマ(偏見や誤解)」の問題があります。痛みそのものもつらいのですが、周囲からの理解が得られにくいことがさらに患者さんを苦しめてしまいます。
今回はこのスティグマについて述べます。
(日本頭痛学会主催のセミナーでは毎回スティグマについての講義がありますが、本記事は直近の10月におこなわれた富士通クリニックの五十嵐久佳先生の講義を参考に作成しています。)
スティグマ、という言葉はもともと古代ギリシアで身分の低い者や犯罪者の体につけた刻印という意味に由来しています。
片頭痛は、脳の過敏性を背景に生じる神経疾患であり、決して気持ちの問題や疲れのせいだけではありません。
しかし現実には「頭痛くらいで休むなんて」「薬を飲めば治るでしょう」といった言葉をかけられ、症状の深刻さを理解してもらえないケースが少なくありません。
痛みは目に見えないため、つらさが正しく伝わりにくいのです。
公的なスティグマ
世間はなぜか頭痛の患者には厳しい目でみます。
例えば「胃炎」「腸炎」と名付けられた病名で病欠する場合は「そうか、胃や腸に炎症か潰瘍かわかんないけど、放置するとまずい病気なんだろう、仕方ないな」「良くなるまで出てくるな」となるかもしれません。
しかし「頭が痛くて休みます」「片頭痛で」の場合、「薬のんだらできるだろ」「そんなので休むな」となりがちです。
片頭痛だって、脳に炎症が生じている、という考え方があります。
世間がそういうとらえ方をしていないのです。患者さん自身もそうとらえてないかもしれません。
症状の重さを軽視して「ただの頭痛」「気合が足りない」
患者さんに対して偏見をもって「言い訳をする」「怠け者だ」「自己管理ができていない」
差別的な態度をとられることだってあるでしょう。
それが職場や学校における公的なスティグマ、といいます。
構造的スティグマ
社会が片頭痛を理解していないために、制度も頭痛患者さんにやさしくない状況になっています。
社会的支援制度の適応外であり、頭痛をみる医療機関への診療報酬も高血圧など生活習慣病よりかなり低くなっています。
片頭痛を研究する公的資金も他の疾患に比べて少ないと言われています。
職場に若い女性が多ければ、必然的に片頭痛の患者の割合が多いはずですが、職場に組織的な配慮があるのかといえば、まずないでしょう。
内面的スティグマ
そういう理解されない社会にいると、患者自身が自己否定する流れになります。
「自分には能力がない」「職場や家族に迷惑をかけている」
羞恥心、孤立。受診をためらい市販薬を大量に服用する。
自尊心が低下し、「自分は人並みに責任や仕事が果たせない」と思い込み、キャリアをあきらめたり。
そういった負の連鎖につながります。
うつなど精神疾患を合併する人が多いのもうなづけます。
職場や家庭で頭痛を隠している人はかなりいます。
40%の人は「片頭痛を隠したことがある」とされています。
なぜ隠す必要があるのか?そういう世の中に生きているからです。
医療機関側も
頭痛で病院を受診しても、頭痛薬を処方して様子をみるだけ、のところがいまだに多いと思います。
患者側もそういうものなんだ、と誤解されているかもしれません。
ただ、頭痛が慢性化して、長く本人の生活の支障をきたすような状況であれば、「頭痛薬で何とかして」は限界があります。
つまり頭痛専門でない医療機関では、まだまだ誤解しているところが多いかもしれません。
当クリニックは開院して半年がすぎたばかりですが、設計の段階で「頭痛患者さんにやさしい暗めの待合室を別に作る」というコンセプトでこれまで運用してきています。
できるだけ頭痛の患者さんのつらさに寄り添って、少しでも頭痛自体が起きないようにと思いながら日々診療しています。
2020年代に入って片頭痛の治療が、抗CGRP作用を持つ注射薬の出現により大きく変わりました。
また、1-2か月以内にこれまでになかった片頭痛用の内服薬が出現します。
今後も通院される患者さんの頭痛がゼロになれるように、私も知識をアプデして進んでまいります。
最近は、高市政権の発足、ドジャース・大谷選手山本選手の話題が大きかったと思いますが、同じ時期にニュースになった日本馬による米国のBCクラシック優勝も個人的に感慨深いものがありました。そのうち凱旋門賞も獲れたらいいですね。
優勝馬フォーエバーヤングの馬主である藤田会長(サイバーエージェント社)は私と同世代ですが、子会社がウマ娘などのゲームを生み出したり、自身がプロ麻雀(Mリーグ)を作ったり、オールドメディアに対抗するAbemaTVで成功したり、サッカーチームのオーナーとなれば町田ゼルビアが先日天皇杯で優勝したり、そもそも馬主になって数年で海外の大レースに勝つという強運。1勝もできないまま引退する馬の方が多いんですよ・・・。
もちろんこちらからは見えない苦労や失敗が無数にあるのでしょうが、人生ゲームとしてはとてもうらやましく楽しそうに見えちゃいます。若いころに麻雀や競馬にはまったモノとしては。

下関市にて、頭痛・片頭痛・めまい・しびれ・頭のけが・物忘れ・脳のMRIなどで相談されたいかたは、ぜひ志摩脳神経外科クリニックにおこしください